97年の年明け早々、私たちは、念願のマイホーム建築に使う丸太を物色するために、建築家のTさんと、東京の東にある飯能市の岡部材木を訪ねた。岡部材木は、丸太を柱や板に加工して出荷している製材業者で、今では数少ない、国産の木だけを扱っている材木屋だ。この岡部材木に、完全乾燥で、しかも200年モノの吉野杉があるという話を建築家のTさんから聞いた私たちは、ぜひその木を見たい、できればその国産材の吉野杉で我が家を建てたいと思って出かけたのだ。
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朝五時に起きて弁当をつくり、建築家のTさんと、Tさんの事務所がある練馬で合流。飯能の岡部材木の作業場に向かった。建築家というと、黒い詰め衿のシャツを着てタバコをふかしながら製図板に向かう、繊細で神経質な人物を思い描く。だが、Tさんは、着るものには無頓着。四角い顔でがっしりした体格の、工務店のオヤジ風。製図板に向かっているよりも現場にいる時間が長く、何でもよく食べる。だから、私たちが、眼鏡の向こうのTさんの目が、時々、繊細で神経質に光るのに気付いたのは、かなりたってからだった。